2016年10月03日

行き過ぎた表現狩りへの警鐘

「ちびくろさんぼ」という童話があります。イギリスのヘレン・バンナーマンという作家によって書かれ1899年に刊行された作品で、かつて日本でも多くの翻訳書が発売されていました。
私は幼いころ「ちびくろさんぼ」が大好きでした。クライマックスで獰猛な虎たちがバターに姿を変える意表を突いたファンタジックな展開にワクワクしたものです。

ところが、1988年にとある団体から「人種差別だ」との抗議を受け、日本国内全ての出版社が「ちびくろさんぼ」を廃刊にしてしまう悲しい事態が勃発しました。それから永らくこの本は国内では手に入らなかったのですが、2000年代に入り相次いで数社から復刊が為され、日本でもまたこの素敵な童話を楽しめるようになりました。

中でも瑞雲舎からの発売の書籍は、私が小さいころに読んだ装丁のままです。復刊の際には、まだ幼かった娘のためにこの本を買い求めました。(画像はリンク先のもの)
http://www.zuiunsya.com/archives/fukkan/chibikuro.html

ちびくろ・さんぼ 表紙 ちびくろ・さんぼ 内容サンプル1

有色人種を題材にした作品が「人種差別」に当たるというなら、「オテロ」も「マダム・バタフライ」も「ミス・サイゴン」も上演禁止にしなくてはなりません。どれも芸術性の高い素晴らしい作品であるだけに、非常に勿体無いことです。想像しただけで悪寒が走りますが、でも現実にそういう事態を招きかねないところまで状況は進んで来ています。

ここ最近、さまざまな作品が「差別表現」だとの「表現狩り」を受け、公開中止に追い込まれたり、云われなき中傷を受けたりしているのを、皆さんご存知のことと思います。私はそういったニュース記事を見るたびに、幼いころに親しんだ「ちびくろさんぼ」のことを思い出します。

こんな事態が続けば表現行為は死を迎えます。表現者の一人としてこの危機は看過出来ません。決して対岸の火事ではないのです。いつ何時、自分が関わった作品に火の粉が降りかかってくるか分かりません。当事者意識を持って、この悪しき傾向にどうにか歯止めをかけなければならないと考えている今日この頃です。

<参考リンク>
[特別寄稿]ちびくろ・さんぼが帰ってきた
(「瑞雲舎のほんだより」から)
http://www.zuiunsya.com/archives/column/chibikuro_returns.html
posted by momo at 07:48| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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